思い込みから始まったご相談
先日、「自動車の車検証の氏名を変更したい」というご相談を、ある女性の方から受けました。
私は当初、ご結婚や離婚による改姓だろうと考え、車検証を確認しました。ところが、所有者欄には男性のお名前が記載されています。
「あ、これは氏名変更ではなく、名義変更(移転登録)のご相談だな」と判断し、「名義変更ですね?」と確認しました。
しかし、その方は真っ直ぐにこうおっしゃいました。
「名前の変更です。」
書類を見て初めて気づいたこと
少し不思議に思いながら、「お名前が変わったことがわかる戸籍謄本はお持ちですか」とお尋ねしたところ、提示された書類を見て驚きました。
そこには、男性名から女性名への「名の変更」がはっきりと記載されていたのです。
その瞬間、私は初めて、この方が性別変更をされたのだと理解しました。
「遠い問題」ではなかった
それまで私は、性的マイノリティの問題を、どこか自分とは距離のあるものとして捉えていたように思います。しかし、この出来事を通じて、それが決して特別な世界の話ではなく、私たちの日常の延長線上にある現実なのだと実感しました。
手続きに伴う見えない負担
性別変更をされた方にとって、その後に続く各種の手続き――自動車の登録、銀行口座、保険、不動産など――は、単なる事務手続きにとどまりません。
本人確認の場面や書類の提示において、過去の情報との不一致が生じることもあり、その都度説明を求められることがあります。
そうしたやり取りは、想像以上に精神的な負担を伴うものではないでしょうか。
特に、社会の中にまだ偏見や無理解が残る現状では、ご本人が自ら窓口に出向き、ひとつひとつ説明しながら手続きを進めることは、大きなストレスとなり得ます。
行政書士ができること
今回のご相談を通じて強く感じたのは、こうした方々に対して、行政書士が果たせる役割の大きさです。
手続きを正確に進めることはもちろんですが、それ以上に、
・ご本人が直接説明しなくてもよい環境を整えること
・安心して任せていただける存在になること
これこそが、専門家として提供できる大きな価値なのではないかと改めて考えました。
おわりに
性的マイノリティの方々に限らず、さまざまな事情を抱える方にとって、手続きの負担は決して小さなものではありません。だからこそ、その負担を少しでも軽減することができる存在でありたい。
今回の出来事は、行政書士としての役割をあらためて考えさせられる、印象深い経験となりました。


