厚生労働省が有料老人ホームの一部に登録制などの参入規制を導入する方向で検討に入ったことがわかりました。
これまで、有料老人ホームは原則として自治体への「届け出」で開設が可能でしたが、今後は一定の基準を設け、事業者の登録を義務づける方向で議論が進んでいます。
■ 背景にあるのは「経済的虐待」や「不適切な介護」
介護の必要度が高い高齢者が入居する有料老人ホームでは、
- 入居者の財産を無断で使用するなどの経済的虐待
- 不適切な身体拘束や介護放棄
といった事例が問題視されています。
こうしたトラブルの多くは、参入ハードルが低く、事業者の質にばらつきがあることが一因とされています。
厚労省は、サービスの質を確保し、安心して暮らせる環境を整えるため、制度的なチェック機能の強化が必要だと判断したようです。
■ 登録制の対象は「中重度の要介護者を受け入れるホーム」
検討中の素案によると、登録制の対象は、
- 認知症の方
- 医療的ケアが必要な高齢者
といった中重度の要介護者を受け入れる有料老人ホームを想定しています。
また、過去に行政処分を受けた事業者については、一定期間の開設制限を設けることも検討されています。
これにより、悪質な事業者の再参入を防ぐ仕組みづくりが進められます。
■ 年内に制度設計を詰め、来年度以降に法整備へ
厚労省は、今後、有識者検討会を開き、年内に制度設計を固める方針です。
実際の法改正や登録制度の導入は、2026年度以降になる見通しですが、
介護業界全体にとっては大きな転換点となりそうです。
■ 事業者への影響と今後の対応
登録制が導入されれば、
- 事業開始前の登録申請手続き
- 事業計画や人員配置、財務状況などの審査
- 定期的な更新・監査制度
が新たに求められる可能性があります。
これにより、既存の有料老人ホームやこれから新規参入を検討する事業者は、
法令遵守体制やガバナンスの整備を早めに進めておく必要があります。