熱中症予防と太陽光パネルの意外な関係


今年も全国的に猛暑が続き、熱中症で搬送される方や命を落とす方のニュースが後を絶ちません。
そんな中、名古屋市立大学の内田真輔教授とアジア成長研究所の柯宜均上級研究員が、興味深い研究結果を発表しました。

太陽光パネルと高齢者の死亡率

調査によると、住宅向けの太陽光パネル設置数が多い地域ほど、高齢者の熱中症による死亡率が低いという統計的に有意な結果が確認されたそうです。

理由は単純明快。
エアコンがあっても「電気代がもったいない」と使わない高齢者は少なくありません。特に年金暮らしの世帯では、冷房利用が控えられる傾向があるといいます。
しかし、自宅に太陽光パネルがあれば日照時には自家発電で電力をまかなえるため、電気代の負担感が減り、エアコンを安心して使えるようになります。これが命を守ることにつながっているというのです。

「適応格差」という課題

この研究の背景には「適応格差」という考え方があります。
温暖化の影響に対して、経済的・社会的に余裕がある人や地域は新しい技術や設備を導入して被害を減らせますが、そうでない人や地域は対応が難しい――その差が健康被害や経済損失の格差につながります。

エアコンを使わずに熱中症になる例は、まさに所得の違いによる適応格差です。太陽光パネルがその差を埋める可能性はありますが、設置費用が高いため、助成制度や高齢者優遇策などの仕組みづくりが必要でしょう。

世界・企業にも広がる格差の影

国際的にも、温暖化による洪水や海面上昇への備えは、豊かな国ほどインフラ整備が進みますが、財政的余裕のない国では被害が大きくなりがちです。
企業でも、大手は資金力や技術力で防災対策を行えますが、中小企業はそうはいかず、被災後の廃業リスクも高まります。

ドイツのミュンヘン再保険によると、世界の自然災害による損失は1980年以降増加傾向にあり、2024年には約50兆円に達しました。被害の多くは社会的・経済的に弱い立場の人々に集中しています。

「気候正義」という視点

温暖化対策は技術だけでは不十分です。最大限多くの人が恩恵を受けられるよう、社会制度や経済の仕組みも含めた公平な対策が必要です。
この「公平性」を重視する考え方は気候正義と呼ばれ、もともとは先進国と途上国の責任分担を議論する文脈で使われてきましたが、国内でも市民や企業間の格差をなくす視点として重要性が増しています。

まとめ

猛暑のなか、太陽光パネルが命を守る役割を果たす――一見意外ですが、これは温暖化対策が暮らしに直結する好例です。
ただし、誰もがその恩恵を受けられるようにするためには、技術の普及と同時に、適応格差を縮める制度設計が欠かせません。温暖化は待ってくれません。今こそ、技術と公平性の両輪での対策が求められています。

当事務所でも、自治体の補助制度の申請や、高齢者・事業者向けの各種支援制度の活用についての書類作成・手続き代行を行っております。
「制度はあるのに手続きがわからない」という理由で恩恵を受けられない方を少しでも減らす――そんなお手伝いも、温暖化時代の“適応”の一部だと考えています。


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