相続手続きの全体像|スムーズな進行のための重要ポイント
相続手続きの大まかな流れを下に示します。準備に手間のかかる手続き、期限があるためタイトなスケジュールで進めなければならない手続き、許認可申請を伴う手続き、複雑な計算が必要な手続きがあり、期限内に適正に行わないと不利益を被ったり、機会損失することもあります。また、手続きの過程で予期せぬ事態に遭遇する可能性もあります。
深い悲しみの中、数多くの煩雑な手続きを行うことは、心身に大きな負担となります。手続きの時間が取れない方や不安を感じている方はご相談ください。少しでも心穏やかに追憶の時間をお過ごしいただけるように、お客様の利益を最優先に考え、最適なサポートをご提供します。
行政書士が対応できない部分については、司法書士、税理士など他の専門家と連携して対応させていただきます。
相続手続の流れ
1. 遺言書の有無確認|相続手続きの第一歩として重要な理由
遺言書に記された故人(被相続人)の意思は、原則として法定相続に優先するため、遺言書の有無は、相続手続きを進める上で、大切なポイントとなります。
公正証書遺言は、公証役場で一括検索が可能で、作成されていれば公証役場に原本が保管されています。自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用している場合は除く)と秘密証書遺言は、遺族で探索します。自筆証書遺言と秘密証書遺言を発見した場合は家庭裁判所で検認の申し立てをします。
2. 相続人の確定が重要な理由|法定相続人を正確に把握する方法
相続手続きをスムーズに進めるために法律上の相続人(法定相続人)を確定しておく必要があります。
被相続人の前妻との間に子供がいたり、知らない人を認知していたり養子にしていたなどといった予想していないことが発覚し、手続きの途中で新たな相続人が現れると、相続手続きが進まなくなる恐れがあります。また、有効な遺産分割協議書の作成や適正な相続税の申告・納付も相続人を確定しないとできません。
法定相続人の確定は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)を全て揃え、その内容を調査して身分関係を明らかにすることで行います。被相続人が生前、本籍を転籍していた場合には、本籍を置いたことがある全ての市区町村からそれぞれ戸籍を取り寄せる必要があります。
3. 相続開始から3か月以内が勝負|財産調査と申立てのスケジュール管理
被相続人が保有していた財産を調査し、相続財産を確定します。
相続財産には、預貯金、有価証券、生命保険、不動産、動産、売掛金、未収金などのプラスの財産だけでなく、借入金や住宅ローン、買掛金、未払金といったマイナスの財産(債務)、さらには保証債務(保証人や連帯保証人としての地位)も含まれます。
債務超過であれば、相続放棄や限定承認の検討をしなければなりませんので、相続財産の確定は重要です。相続放棄と限定承認の申し立ては、相続開始日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から3か月が期限となっており、時間的に厳しいので、迅速に被相続人の保有財産の調査を終え、財産目録を作成する必要があります。相続財産目録の作成は、相続税を算定する上でも必要な作業です。
4. 債務超過時の相続対策|相続放棄と限定承認の基礎知識
相続財産が債務超過、あるいは将来大きな債務を発生する可能性がある場合は、相続放棄または限定承認をするか判断します。
相続放棄は、相続人がプラスの財産、債務、保証債務の一切を受け継がないもので、限定承認は、相続人が相続によって得たプラスの財産の限度内で債務の負担を受け継ぐものです。
これらをする場合は、相続開始日の翌日から3か月以内に必要書類を揃えて被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。この期限内に申立てをしない場合は、単純承認を選択したとみなされ、相続人は債務や保証債務も含めて全ての相続財産を受け継ぐことになります。
また、相続人が相続財産を処分する行為を行うと単純承認したものとみなされますので、相続放棄や限定承認をする可能性がある場合は、安易に、被相続人の預貯金の解約・払戻や生命保険の給付金の請求、債権の取立て、準確定申告で所得税の還付請求などをしないように注意してください。
相続放棄は、各々の相続人が単独で申立てできますが、限定承認は、相続人全員で申立てをする必要があります。なお、相続放棄と限定承認は一度行ったら撤回することはできません。
5. 被相続人の所得税申告|相続人が負う準確定申告の責任
被相続人が、事業収入があったり不動産収入があったりして確定申告を要する立場であった場合は、相続人が準確定申告を行う必要があります。
被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までに得た収入から課税所得と税額を計算して、所得税の申告と納付を行います。
相続開始日の翌日から4か月以内に準確定申告書と関係書類を所轄税務署に提出しますが、準確定申告の申告義務は相続人全員が負っていますので、相続人全員が申告書を提出する、あるいは相続人全員の連署した申告書を提出する必要があります。
6. 遺産分割協議書の作成手順|不動産登記や名義変更に必須の書類
相続財産は、相続人が複数いる場合、相続開始日からすべての相続人共有の状態にありますので、話し合いによって誰が何を受け継ぐのかを確定するために相続人全員で協議をします。もし、相続人同士で話がまとまらない場合には、家庭裁判所の調停を利用する方法もあります。
遺産の分割が決まったら遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、相続税の申告や、相続した不動産の登記、預貯金口座や有価証券、自動車の名義変更の申請手続きなどで提出が求められます。
遺産分割協議には法定期限はなく、相続人全員が合意するまで協議を続けることが可能ですが、相続税の申告期限が相続開始日の翌日から10か月となっていますので、基本的に遺産分割協議書もそれまでに作成しておく必要があります。
遺産分割協議書を公正証書として作成すれば、より高い証拠力を持たせることができます。
7. 相続財産の名義変更とは?不動産から預貯金までの手続きガイド
相続人が、相続した財産の名義変更手続きをします。
不動産は法務局で相続登記申請を行います。その他、名義変更が必要な財産としては、上場株式、預貯金、自動車、電話加入権などがあります。
時には、不動産を相続したものの、そこを他人が使用していたというような場面もありえます。その場合、占有者の取得時効が成立していなければ、相続回復請求権を行使して不動産を取り戻すといった措置が必要となります。
8. 事業承継手続きとは?相続人が行う事業承継の流れと注意点
事業承継された相続人は、事業承継手続きを行います。
許認可等が必要な事業では、事業者の地位を承継できるものとできないものがあります。承継できるものについては、所轄の官公署に承認届や相続の申請手続を行います。承継できない事業の場合は、被相続人についての廃業等の手続きを行ったうえで、相続人が新規に許認可等を取得しなければなりません。
9. 相続税申告の期限とペナルティのリスク|期限内の適正申告と納付の重要性
相続税は申告納税方式を採用しており、自分で納めるべき金額を計算して申告と納付をしなければなりません。ただし、遺産総額が基礎控除の金額内であれば、納めるべき相続税がありませんので、特に手続きをする必要はありません。2024年税制の基礎控除は、(3,000万円+600万円×法定相続人の数)で計算されます。
相続税には、「小規模宅地等の課税価格の計算の特例」や「農地等の納税猶予の特例」、「配偶者の税額軽減」、「贈与税額控除」、「未成年者控除」、「障がい者控除」、「相次相続控除」、「生命保険金の非課税枠」、「死亡退職金の非課税枠」、「住宅取得資金に係る相続税の非課税措置」などの税額を軽減する特例や控除の制度があり、これらの軽減制度を利用した場合は、たとえ納付する金額がゼロになったとしても申告はしなければなりません。
相続税は、財産の種類によって課税価格の計算方法が異なるとともに、様々な税額軽減制度があるため複雑で、税務知識がないと適正かつ有利な納税額を算定するのは困難です。相続税の申告と納付は、相続開始日の翌日から10か月が期限となっています。期限内に適正な申告と納付を行わないと、無申告加算税や過少申告加算税、重加算税、延滞税といったペナルティを課される可能性があります。逆に、適用可能な軽減制度を利用しないで申告・納付した場合でも、税務署から相続税の払い過ぎが通知されることはありません。申告にあたっては、過少申告のみならず過大申告にも注意してください。
ここをクリックして頂くと、国税庁のサイトで相続税の申告のおおよその要否を判定することができます。
相続手続きで困ったら行政書士 林敏昭事務所へ
迅速・丁寧にサポートします
お気軽にお問い合わせください。058-374-3439受付時間 9:00-19:00
無料相談はこちら